「電流」
電気を学習していると、電流という単語が頻繁に出てきます。
みなさん、電流って、知ってますか?
「電流でしょ?うん、知ってる知ってる。あの電流のことよね」と答える人がほとんどでしょう。
じゃあ、その電流ってどんなものなのか説明してほしいとお願いされたら、すぐに答えられる人は何人いるのでしょうか?
「聞いたことある」、「何気なく使ってる」けれど、電流が本当にどんなものあるかは知らない人が多いのでは。
テレビのスイッチを押して好きな番組を見ることはできるけれど、どうしてテレビの画面が映るのかなどの仕組みは全くわからない、というような感じでしょうか。
電流とは、「電子の流れ」です。
…うーむ。
なんだかわかったような気になるのですが、そもそも電子とは何なのでしょう?
まずここで、電気の基礎中の基礎である「電子」や「電荷」について説明し、最後に「電流」についてお話します。
電子
この世界に存在するすべての物体は、とても小さな粒子である「原子」というものから構成されています。
原子はプラスの電気の性質を持つ原子核と、マイナスの性質を持つ電子からできています。
厳密にいうと、原子核は電気的にプラスの性質を持つ陽子と、プラスでもマイナスでもない中性子から成り立っているのですが、ここでは中性子の説明は省略します。
原子核を中心に、マイナスの電子が回ってます。
その電子が回る場所を「軌道」とよびます。
例えば、ヘリウム原子は、原子核を中心に電子が2個回っています。
リチウム原子なら電子が3個、ベリリウム原子なら電子が4個、ということになります。
この数は、元素周期表で確認できますね。
いわゆる、「すいへーりーべーぼくのふね…」で学生時代に覚えた、あの周期表です。
横道に逸れますが、この周期表、おもしろいですよ。
安定した原子は、「電子の数」と「陽子の数」が同じです。
ヘリウムには陽子の数が2個、電子の数も2個ですが、陽子はプラスの性質、電子はマイナスの性質を持つため、
+2(陽子)+(-2)(電子)= 0
となり、プラスにもマイナスにも偏っていない、つまり「バランスがとれた状態」になっている、ということです。
さて、半導体によく使われ、「シリコン」とも呼ばれるケイ素(Si)は、電子が14個あります。
一番内側の軌道(K殻)には電子が2個、その外側の軌道(L殻)には電子が8個入っていて、この数はそれぞれの軌道の最大電子数です。
一番外側の軌道(M殻)には電子が4個入っていて、電子数は合計14個。
原子核の中にある陽子と電子には、お互いに引きつけ合う「クーロン力」が作用しています。
この一番外側の軌道を回る電子は、原子核から距離が離れているので、クーロン力が一番弱くなっています。
そのため何らかの力が加わると、一番外側の軌道(M殻)の電子が原子の外まで飛び出してしまうことがあるのです。
原子核とのつながりがなくなった電子は自由電子となって、物質内を移動し始めます。
このように軌道から電子を外して、物質中を自由に移動できるようにしてあげると、電子が流れます。
この電子の流れが、「電流」なのですね。
電荷
正確にいうと、電子の持っている電気の量、つまり「電荷」が流れると、電流になります。
ただ、
電子の流れと電流の流れは逆方向
電子はプラスからマイナス、電流はマイナスからプラス方向に流れる
ということに注意してください。
この電子と電流の関係については、後ほどの「電流」で再度説明します。
電荷の記号はQで表され、単位には[C](クーロン)を使います。
電荷には正と負があり、それぞれ正電荷、負電荷といいます。
同じ符号同士の電荷は反発し合い(斥力、せきりょく)、異なる符号同士の電荷は引きつけ合います(引力)。
磁石のS極とN極に似てますね。
電荷と磁石、似ていいますが、実は大きな違いがります。
電荷はプラスの電荷やマイナスの電荷が、それぞれに存在することができるのですが、磁石の場合、N極とS極が単独で存在することはできません。
電流
電荷でも触れましたが、電流は電荷の流れのことです。
また、
電流の向きは自由電子の移動方向と逆
と、定義されています。
「負電荷を持つ自由電子が動くときというのは、正電荷が逆向きに動く」、とも言えますね。
つまり、
電流の向きは、正電荷が動く向き
なのです。
電流は記号Iで表され、単位には[A](アンペア)が使われます。
電流の大きさというのは、
ある面を単位時間に通過する電荷の量
で定義されます。
つまり、
「1[A]の電流とは、ある面を1[s(秒)]の間に1[C]の電荷が通過する」
ことを意味します。
ちなみに、電子の電荷は1.602×10-19[C]です。
上記の情報をもとに式を立てると、
となります。
ある面を1秒間に通過する電荷が1Cなら、1Aの電流が流れる、ということです。
これが、電流の正体なのです。
まとめ
まとめれば、こういうことです。
電荷の流れのこと
1[A]の電流とは、ある面を1[s(秒)]の間に1[C]の電荷が通過することを意味する
次回は、電圧についてお話したいと思います。