数の表現を正しく翻訳する
現在、実ジョブに取り組んでいますが、今回の案件には、数字や、等号、不等号関連の記述がたくさん出てきます。
“is equal to” だったり、”one or more” だったり。
“more than”を「より」と訳すことは、英語を習いたての中学生でも、知ってますよね。
でも、本当にしっかり理解していると自信を持っていえる人は、どれくらいいるのでしょうか?
“more than” の例
Weblioで、いくつか例文を見てみましょう。
Seven is more than five.
7は5より多い[大きい].
確かに、7は5よりも数が多いです。
これであれば、英語を学習中の中学生でも、正しく訳せるはず。
では、次の例文。
Fatalities numbered more than fifty.
死者50以上を数えた。
研究社 新和英中辞典からの引用のようですが…。
これって、本当に正しく訳されているといえるでしょうか?
英語の “more than”は、その数(上記の例だと50という数字)は含まれません。
50よりも上の数、ということで、「~を超える」を使うのが正しいのではないでしょうか。
したがって、上記の訳出は、「50人を超える死者を数えた」とするべきです。
死者が49人と50人では、やはり意味が違ってきてしまいます。
「20歳なのにお酒を飲んじゃいけないの?」と勘違いされる例
日本では、20歳になったらお酒が飲めるようになります。
20歳未満が未成年、20歳以上なら成人ですよね。
日本にいる外国人のお友達に、
「20歳以上だったら、お酒飲んでいいんだよ」
と説明したいとします。
「20歳以上」だから、”more than 20″ って訳していいんだよねと思い、
“If you are more than 20 years old, you can drink alcohol.”
とお友達に伝え、そのお友達が20歳だったとしたら…。
その子は、「あ、じゃあ自分はまだお酒を飲んじゃいけないんだ」と勘違いしてしまうでしょうね。
実は、ここでは、
“more than 20″ ではなく、”over 19”
を使うべきなのです。
“over”は、その数(上記の例では19)を含まないため、結果「20歳以上」と表現されたと同じになるわけです。
「20以上」って、英語でどう表すの?
これは、20という数字と、それより上の数字を合わせた数、ということになります。
ということで、
20 or more
あるいは、
20 and more
と表します。
日本語の「以上」は、その数字を含む(上記の例だと20という数字)ので、英語では上記のように書かれるのです。
「いちいち考えるの面倒だし、そんなちっちゃいこと、気にしなくたっていいじゃない」
と思われるかもしれませんが、翻訳者にとってこのような間違いは致命的です。
トライアルでこの間違いをしたら、確実に不合格となるでしょう。
それくらい大事なことなのですが、”more than”=「以上」のような間違いが、辞書内でさえも見つかることに驚かされます。
せっかくの機会なので、ここで簡単な数字の表現リストをご紹介しましょう。
「以下」「以上」「未満」「を超える」のリスト
- more than…
- greater than…
- higher than…
- larger than…
- above…
- over…
- in excess of…
- less than…
- fewer than…
- lower than…
- smaller than…
- below…
- under…
- … or [and] more
- … or [and] greater
- … or [and] above
- … or [and] over
- … or [and] up
- not less than…
- no fewer than…
- greater than or [and] equal to…
- equal to or [and] greater than…
- … or [and] less
- … or [and] fewer
- not more than…
- not exceeding…
- no more than…
- less than or [and] equal to…
- equal to or [and] less than…
*上記リストは、翻訳講座.comよりお借りしています。
“more than” の応用問題
さて、ここで問題です。
“more than one”は、どのように訳したらいいのでしょうか?
1より大きい
1を超える
間違ってはいませんよね。
でも、上記の訳だと、なんだかたどたどしい。
文章全体の流れからして、数字が整数である場合に限りますが、”more than one”を
- 複数の
- 2つ以上の
と訳すとスッキリします。
- 単数(=1)より大きい数だから、複数。
- 1より大きい数だから、2。
同様に、”more than two”であれば、「3以上の」ということもできます。
ただ、文章の流れから使える場合と使えない場合があるので、内容を理解し、しっかり見極めた上で訳出するべきですね。
おまけ:等号、不等号
等号、不等号のサインとその対訳については、Wikipediaの説明がおススメです。
最後に
今回は、数の表現を正しく翻訳することについてお話しました。
今回の説明を読み、今後みなさんが、「以下」、「以上」、「未満」、「超える」を間違えることなく訳せるようになれば、少なくとも数字の表現に対してこれまでよりも注意深くなれば、と思います。
文法書やいろいろなテキストの説明を読むことは大事ですし、英語の上達、そして翻訳の質の向上に役に立ちます。
しかし、本当にその知識を身につけるためには、実際にその表現が使われている文章を、たくさん読んだり書いたりすることが必要です。
テキストやインターネットなどからどんどん使える表現を吸い上げることで、自分の翻訳能力もアゲアゲにしちゃいましょう!