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SEMICON Japan 2018で一番楽しかったブース:minimal Fab
今回のSEMICON Japanの訪問では、露光装置関連の情報を仕入れてくることを主な目的としていました。
しかし実際に訪れ、一番感動したのが、こちらのminimal Fabブースです。
minimal Fabって何?
minimal Fabは、簡単にいうと、「とっても小さな半導体製造システム」です。
どれだけ小さいかというと、ウェハの大きさがなんと0.5インチ(12.7mm)!
製造装置は全て、”幅30cm x 奥行45cm x 高さ144cm”で統一されており、それぞれの装置の機能が細かく分かれています。
2017/03/14 に公開
また、横河電機のサイトでも、ミニマルファブの動画が掲載されています。
興味のある方はぜひご覧になってください。
ミニマルファブの装置って、どんなものがあるの?
下記リストが、2018年12月現在販売中(受注生産販売中も含む)のミニマルシリーズです。
- ミニマル洗浄機(RCA), SPM)
- ミニマルコータ
- ミニマルマスクアライナ
- ミニマルマスクレス露光
- ミニマルディベロッパ
- ミニマルレジストリムーバー
- ミニマルウェットエッチャー
- ミニマルプラズマエッチャ―
- ミニマルファーネス, 拡散炉
- ミニマル酸化路
- ミニマルTEOS プラズマCVD
- ミニマルポリシリコンCVD
- ミニマルエピタキシャルCVD
- ミニマルスパッタ
- ミニマルCMP
- ミニマルイオン注入
- ミニマルPZTゾルゲルステーション
- ミニマルSODドーピングステーション
- ミニマルイオンミリング装置
- ミニマル深掘りエッチャ―
- ミニマルデバイステスタ
- ミニマル表面異物検査装置
- ミニマル光学式干渉膜厚計
- ミニマル走査電子顕微鏡
- ミニマル圧縮モールド装置
- ミニマルダイボンディング装置
- ミニマルインクジェット配線装置
- ミニマルポールマウンタ
- ミニマルレーザアブレーション
- ミニマルワイヤボンダ
- ミニマルグラインダー
- ミニマルダイサー
- ミニマルラミネータ
- ミニマルバンプ接合
*国立研究開発法人産業技術総合研究所 一般社団法人ミニマルファブ推進機構ファブシステム研究会「ミニマルファブ構想」より引用
すごい数ですよね。
SEMICON Japan会場でも、多種多様な装置がズラリと並んでいました。
下記がミニマルファブブース、および関連企業ブースの見取り図です。
ミニマルファブの装置って、クリーンルームに置かなくて大丈夫なの?
SEMICON Japan会場内は、かなりの数の訪問者がひしめきあい、ホコリが舞っている状態です。
あれ?
半導体製造って、クリーンルームじゃないとダメなんじゃなかったっけ?
ミニマルファブの装置を、SEMICON Japan会場に直置きしちゃって大丈夫なの?
少しでも半導体製造の知識がある人なら、そんな疑問が頭の中に浮かぶことでしょう。
実はミニマルファブのクリーンルームって、上記動画内で見えているあの赤い容器なんです!
この「ミニマルシャトル」と呼ばれる容器は、0.5インチのウェハを運ぶための密閉搬送容器。
この容器でミニマル装置間をハンドリングすることで、クリーンルームではない環境下でも、製造ラインの構築が可能となっているんです。
クリーンルームが指先で簡単に持てちゃうなんて、本当に驚きですね。
ミニマルシャトルの特許明細書の1例
下記の明細書の抜粋(「要約」と「発明の効果」記載)で、ミニマルシャトルがどんな装置でどんな役割を果たしているのかが、だいたい把握できます。
(11)【公開番号】特開2014-110309(P2014-110309A)
(43)【公開日】平成26年6月12日(2014.6.12)
(54)【発明の名称】搬送容器の開閉装置
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】 【氏名】原 史朗
(72)【発明者】 【氏名】前川 仁
(57)【要約】 【課題】より簡便に容器の蓋を開閉することができ、ウエハが容器外の雰囲気に晒される時間を削減し、蓋の開閉に伴う微細な塵等により汚染される可能性を低くすること。
【解決手段】搬送容器本体と搬送容器扉で構成される搬送容器の搬送容器扉を開閉するための、以下の構成を有する搬送容器の開閉装置。
開閉装置上部には該搬送容器本体を収納できる凹部からなる載置部を設け、
その凹部の内面は該搬送容器本体の外面形状に対応した形状であり、
該載置部底面は、搬送容器扉に形成されている凹部に嵌合する凸部であり、
該載置部底面の搬送用容器扉に設けた磁石に対応する位置には、磁石を収納してなる孔が形成し、
該磁石は該載置部底面を横切るようにして駆動力により上下に移動可能となる機構である。
【発明の効果】 【0021】 本発明によれば、従来の容器とは異なり、容器に直接触れることなく、容器の蓋を確実に密封状態から開けることができ、かつ開けた状態から確実に密封することができ、内容物の収納や取り出しを任意に速やかに行うことができる。しかも蓋の開閉時に塵や埃が発生する量が少ないので、内容物を必要以上に汚染することがない。
このような構造をしていることで、容器内がクリーンルームとして保たれているのですね。
その他ミニマルファブ関連の特許明細書の例
(11)【国際公開番号】WO2016/084643
(43)【国際公開日】平成28年6月2日(2016.6.2)
【発行日】平成29年10月19日(2017.10.19) (54)
【発明の名称】前工程-後工程一体化システム
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
もちろん半導体製造中はクリーンルーム状態でなければいけません。
ですので、各ミニマル装置内には、局所クリーン化インターフェース:「ウェハロードロック:PLAD」システム(下記の図9)が装備されています。
この”PLAD”とは、”Particle Lock Air-tight Docking“の略です。
このシステムのおかげで、シャトルに収容されているウェハ、半導体チップ、パッケージ基板などを外気にさらすことなく、ミニマルファブ装置(下記の図中の2)内へ出し入れできるようになるのです。
minimal Fabの長所は?
なんといっても、コスト削減です。
大量生産用のファブは、土地、工場、クリーンルーム、装置などかなりの投資が必須条件となっています。
初期設備投資に、なんと、数百~数千億円が必要とされるといわれています!
これだけの設備投資をするということは、年間にものすごい数の半導体を製造しなければ、割に合いませんね。
しかし、世界トップクラスの大企業ならともかく、年に数億個の製造を必要とする企業ばかりではないのが現状です。
その点ミニマルファブは、初期設備投資に数億~数十億円(大量生産用の約1000分の1)、半導体1個から生産可能で、年に数万個の生産量であれば、大量生産のメガファブよりも低コストで済むのです。
ということは、これまで半導体製造をあきらめていた企業も、このシステムによって可能性が生まれます。
また、少量の半導体チップ製造が可能となるため、研究開発などにも貢献する、ということですね。
ミニマルオリジナルクッキー&ボックス
Semicon Japanでミニマルファブブースを訪れたところ、スタンプラリーの紙をいただきました。
ミニマルファブブースと関連企業ブースの合計26か所を周ると、スタンプとクッキーがもらえます。
スタンプを全26個集めると、抽選でミニマルウエハ上にレジスト描画してもらえ、自分の名刺を製作してもらえるという、素晴らしいプレゼントがありました。
残念ながら、自分は抽選にはずれてしまいましたが、naoさんがみごと当選し、自分も一緒に大感激しました。
いやぁ、これは本当にほしいですね。
すごくいい記念になりますし、0.5インチのウェハなんて、普通手に入らないじゃないですか。
お金を出してもいいからほしい、といいたいところですが、もし作ってもらえるとしたら、いくらの支払いになるのでしょうか。
ミニマルファブ推進機構のご担当者様、お願いです、来年もこの抽選プレゼントを開催してください。
できましたら、当選確率を上げていただけると、大変嬉しいのですが。
クッキーも26個しっかり集めました。
クッキーを12個以上集めると、特製のボックスがもらえます。
アイキャッチ画像もそのボックスの表紙絵ですが、キャラクターのロボットがかわいいんですよね。
クッキーはミニマルファブブース内16か所で配布され、それぞれの違ったデザインが施されていました!
関連企業ブース(10か所)は共通デザインで、ミニマルファブブースと合わせて全17種類のデザインのクッキーが無料で配布されるだなんて、太っ腹ですよね。
全部ご紹介したかったのですが、写真を撮る前に、子供2人と主人がいくつか食べてしまい、5種類は3人のおなかの中に消えてしまいました…。
せっかくですので、かわいいクッキーをいくつかご紹介します。
まずこちら、マスクレス露光装置。
このミニマルマスクレス露光装置について、PMTの方が丁寧に説明してくださりました。
その他には、堀場エステックの光学式干渉膜厚計、
プレテックのRCA洗浄機や、
ディスコの3D顕微鏡などなど、全てのデザインが異なり、本当に手が込んでいるなぁ、と感心してしまいます。
ちなみに、帰宅途中の品川駅で、お土産のお菓子を買ったのですが、主人に「買ったお菓子よりも、こっちのクッキーの方がおいしい」といわれました。
だったら、スタンプラリーを1日1周、3日で3周して、合計78個のクッキーをもらってお土産にして、さらにウェハプレゼントの当選確率を3倍に上げればよかったのかも…。
いや、いくら節約家とはいえ、そのまでケチではないので、クッキー3周分はいただきませんけどね。
最後に
まだまだ書きたいことはあるのですが、収まりがつかなくなりそうなので、この辺で終わりにします。
1つ、こちらで特記しておきたいことがあります。
ミニマルファブのブースにはたくさんの係の方がいらっしゃいましたが、どの方もとても気さくに笑顔で対応してくださいました。
どんな質問をしても、しっかり答えてあげようという熱意が伝わってきたのは、自分だけではないと思います。
特に、大企業のブースでかなり冷たい対応をされた今回のSEMICON Japanの参加の中、こちらのブースでの体験はとてもありがたいものでした。
このような体験をすると、「こちらの特許翻訳に携わりたいな」という気持ちが湧きあがってきます。
この気持ちをモチベーションにし、これからもどんどん成長し続けていくつもりです。
- 第1回:ミニマルファブの沿革
- 第2回:ミニマルファブのコンセプト
- 第3回:ミニマルファブの開発戦略
- 第4回:ミニマルファブのテクノロジー
*今回掲載した写真や見取り図に関しては、予めメールで問い合わせ、ミニマルファブ推進機構および産総研よりブログ掲載の許可をいただいています。
ミニマルファブ推進機構の方も、産総研の方も、自分のような一翻訳者に対し、とても優しい対応をしてくださりました。
上記の動画「小さな小さな半導体製造システム ミニマルファブ」で解説されていらっしゃる方は、ミニマルシャトルの発明者でもある、産総研の首席研究員の原史朗工学博士です。
実は、今回のメールでの問い合わせで、原史朗さんからとても丁寧で温かいお返事をいただき、感激してしまいました。
問い合わせの返答のみならず、半導体の書籍のアドバイスなども惜しみなくいただきましたことを、こちらでお礼させていただきます。
本当にありがとうございました。