今朝の新聞で、「新ナノ素材作製ー名大院グループが成功」との記事を見つけました。
新ナノ素材だなんて、面白そうじゃありませんか!
名古屋大学院工学研究科が、鉛の原子が一層のシート状に並んだ単原子層結晶「プランベン」の作製に成功した、とのことです。
プランベン…、聞いたこともありませんでした。
新聞を読み進むと、この新素材はグラフェンと同じ構造で、炭素が鉛に置き換わっているものとのこと。
グラフェンについてはいろいろと情報がありますね。
次世代半導体デバイスの材料ということでも、よく知られています。
ここでまず、グラフェンについて少し説明します。
グラフェン
定義
1原子の厚さのsp2結合炭素原子のシート状物質。炭素原子とその結合からできた蜂の巣のような六角形格子構造をとっている。名称の由来はグラファイト (Graphite) から。グラファイト自体もグラフェンシートが多数積み重なってできている。
グラフェンの炭素間結合距離は約0.142 nm。炭素同素体(グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレンなど)の基本的な構造である。
*引用:Wikipedia
構造
炭素同素体
これら同素体の構造がどうやって作られているか、今まで深く考えたことがありませんでした。
グラフェンWikiを引用すると、
「グラフェンは、2次元のハチの巣状格子内に周密に詰め込まれた単層の炭素原子であり、他の全ての次元のグラファイト系材料の基本構成ブロックである。グラフェンを丸く包めば0次元のフラーレン、巻けば1次元のカーボンナノチューブ、積み重ねれば3次元のグラファイトが得られる」
基本構成ブロックを切り取って、いろんな次元の立体を作っているような感じですね。
しなやかな素材でプラモデルを組み立てているようで、面白いです。
特性
グラフェンは機械的、電気的、光学的などいろいろな側面で優れた性質を持っています。
機械的
非常に強くてしなやかです。
最大引張強度は鋼の100倍以上で、20%引き延ばしても結晶構造が壊れることはありません。
電気的
非常に伝導特性が良い物質で、室温でのキャリア移動度はSiの100倍以上です。
光学的
赤外から可視領域の光を2.3%吸収しますが、これは一般的な半導体材料に比べ、1~3桁大きな値です。
上記からもわかるように、グラフェンは薄くて頑丈で電気伝導性が高いという特性を持っています。
そのため、次世代の材料として注目されています。
しかし、万能ではないんですね。
グラフェンの欠点は、伝導性を制御しづらいこと。
これに関して、いろいろな研究がなされているようです。
たとえばMITでは、「光パルスでグラフェンの電気的挙動を制御」する研究がされていました。
ここで、名古屋大学院が進めた研究が、「プランベン」です。
プランベン
グラフェンの炭素を重い元素に置き換えると、伝導性を制御しやすくなると予想され、最も重い元素の候補が鉛だったとのこと。
プランベンの作製手順
ちなみに、この「ナノウォーターキューブ」は、2008年に北京で開催されたオリンピックの水泳競技の会場に由来しています。
確かに、この泡っぽい外観が似てますね。
特性
この「伝導性を制御しやすくなる」という特性のおかげで、グラフェンと比べ、電気を効率的に通せるようになります。
そのため無駄なエネルギーを消費せず、電化製品の省エネ化などに応用できる可能性があるとのことです。
グラフェンの発見だけでもすごいことなのに、プランベンはその上を行くことができるかもしれません。
乞うご期待
半導体を学ぶ者として、この素材にはすごく興味を惹かれました。
しかし残念ながら、一般公開されている情報はほとんどありません。
特許明細書で何か手掛かりはないかとJPlat-Patで検索しようと思ったら…システム障害が起きていているために、検索があまりうまくいかない状況です。
かれこれ4日目にもなるので、特許庁様、早く復旧してください。
それはともかく。
プランベンはまだ生まれたばかりの赤ちゃんのようなので、これからさまざまな研究が重ねられ、成長していくのでしょう。
今後、「おおっ!!」と驚かされるような発展を遂げ、半導体デバイスの成長が加速していくといいなと思っています。
参考資料:名古屋大学プレスリリース『ナノテク新素材の至高目標~グラフェンの従兄弟「プランベン」の発見成功!~』