昔から食べ物の「焦げ」は、からだに悪いと言われてますよね。
それに、「フライドポテト」や「ポテトチップス」なども健康に悪いと言われています。
実は、これって、食べ物を高温で調理するときに発生する「アクリルアミド」に深く関係しているのです。
このアクリルアミドとはどんなもので、どんな食品から摂取されるのか、また、身体への影響や、アクリルアミドを減らすためのオススメ調理方法・調理器具を、わかりやすく説明します。
目次
アクリルアミドってどんなもの?
国際がん研究機関(IARC)は、アクリルアミドを「ヒトに対しておそらく発がん性がある物質(グループ2A)」と分類しています。
分類 | 評価内容 | 例 |
---|---|---|
1 | 人に対して発がん性がある | コールタール、アスベスト、喫煙、カドミウム、ディーゼルエンジンの排気ガス等 |
2A | 人に対しておそらく発がん性がある | アクリルアミド 、クレオソト(木材の防腐剤)等 |
2B | 人に対して発がん性を示す可能性がある | クロロホルム、わらび等 |
3 | 人に対する発がん性については分類できない | カフェイン、コーヒー、お茶、コレステロール等 |
4 | 人に対しておそらく発がん性がない | カプロラクタム(ナイロンの原料) |
発がん性が疑われている物質が5段階に分類されているのですが、アクリルアミドは、上から2番目のグループに入っているんですよね。
発がんのリスクはあるものの、それ以外のリスクは極めて低いと言われています。
アクリルアミドは、主に、紙力増強剤や水処理剤、土壌凝固剤、漏水防止剤、化粧品(シェービングジェルや整髪剤)などの原料として1950年代から製造されている化学物質です。
2002年、スウェーデン食品庁とストックホルム大学により、じゃがいもや穀類加工品に発がん性があるアクリルアミドが高濃度に含まれる可能性があることを発表があり、世界の関心が高まりました。
アクリルアミドの化学反応
炭水化物を多く含む食品を高温( 120 ℃以上)で加熱調理することによって、食品中のアスパラギンがブドウ糖、果糖などの還元糖と反応してアクリルアミドに変化します。
ちなみに、アスパラギンはアミノ酸の一種です。
どんな食品に含まれているの?
アクリルアミドは、炭水化物を多く含む原材料を高温(120℃以上)で加熱調理した食品に含まれる可能性があります。
特に、ポテトチップス、フライドポテトなど、じゃがいもを揚げたスナックや料理、ビスケット、クッキーのように穀類を原材料とする焼き菓子などに、高濃度に含まれています。
上記のようなお菓子だけでなく、コーヒー豆、ほうじ茶葉、煎り麦のように、高温で焙煎した食品にもアクリルアミドが高濃度に含まれているとのこと。
アクリルアミドはとても水に溶けやすいので、これらから抽出したコーヒー、ほうじ茶、麦茶などの飲料にもアクリルアミドが含まれていることが確認されています。
じゃがいもやお茶だけでなく、家庭で普通に調理した食べ物でも、アクリルアミドが出てくるんですよね。
みなさん、家庭料理として普通に野菜炒めが食卓に出てきませんか?
焼肉パーティーでこんがり焼き目のついたお肉を食べていませんか?
実は、こういった何気ない食事から、知らず知らずにアクリルアミドを摂取しているんです。
食品中のアクリルアミド含有量の例
ポテトチップスなどのじゃがいもの加工品やお菓子の濃度が高くて恐ろしい。
インスタントコーヒーの飲みすぎにも注意ですね。
夏の定番となっている麦茶からも、かなりアクリルアミドを摂取しているという事実、知っている人は少ないはず。
麦茶は「抗酸化成分」が含まれているからがんになりにくい、なんて言われていますが、アクリルアミドの含有量という視点からは、発がん性の可能性もあるんです。
調理時間とアクリルアミドの濃度の比較
ポテトの揚げ時間が長ければ長いほど、アクリルアミドの濃度が上がっていくのがわかります。
この結果を見ると、焦げたポテトはもう食べられませんね。
アクリルアミドの摂取を減らすために、揚げ物や炒め物の調理時間はなるべく短くするべきです。
アクリルアミドによる健康への影響は?
厚生労働省の「加工食品中アクリルアミドに関するQ&A」では、こう書かれています。
食品健康影響評価においては、食品由来のアクリルアミドの摂取について、発がん以外の影響については極めてリスクは低いとする一方、発がんのリスクについては、ヒトにおける健康影響は明確ではないものの、動物実験の結果、公衆衛生上の観点から懸念がないとは言えないため、引き続き合理的に達成可能な範囲でできる限りアクリルアミドの低減に努める必要があると結論付けています。
「健康に悪い影響があるとハッキリとは言えないけれど、発がんリスクの可能性がないとは言えないから、できるだけ減らした方がいいね」、という感じでしょうか。
では、アクリルアミドをなるべく摂取しないようにするには、どうしたらいいのでしょうか?
高温加熱をすると、アクリルアミドがたくさん出てくることがわかっています。
高温がダメなら、低温で調理しましょう!
低温での調理方法
炒めるときは、火力を弱めに
上の図のとおり、日本人の56%は、アクリルアミドを高温調理した野菜からの摂取しています。
野菜炒めをするとき、ちょっと焦げていたほうが香ばしくておいしいと感じるかもしれません。
しかし、アクリルアミドを減らすために、あまり焦がさず低温で炒めるようにしましょう。
焦がさないようにするには、食材をよくかき混ぜながら炒めるといいですよ。
「炒める」、「揚げる」、「焼く」のかわりに、「蒸す」、「煮る」、「ゆでる」をうまく使おう!
「蒸す」、「煮る」、「ゆでる」がいい理由
調理法には、「煮る」、「蒸す」、「ゆでる」、「炒める」、「揚げる」、「焼く」などの分け方ができます。
この中でも、「煮る」、「蒸す」、「ゆでるが」が、その他の調理法に比べて安全です。
というのも、水で煮たり、蒸したりしている限り、100度以上の温度にはならないからです。
その一方で、油で揚げれば150〜220度に、また焼いた場合には200〜300度もの高温になる場合があるので、アクリルアミドの濃度が高くなってしまうんですよね。
なので、フライドポテトのかわりに粉ふきいもやマッシュポテトで代用したり、野菜炒めではなく蒸し野菜にすることで、アクリルアミドを減らすことができます。
しかし、普通のお鍋でお肉の塊など蒸したり煮たりするには時間がかってしまいます。
そうなると、忙しい方には問題ですよね。
圧力鍋
そんなとき、圧力鍋などを使うのがオススメです。
私は筋のあるお肉の塊や豆などを素早く調理したい場合に、圧力鍋をよく使います。
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あれ?
圧力鍋って、圧力かけてると温度が120℃以上になるんじゃないの?
そう、温度は120℃以上になります。
じゃあ、圧力鍋って使えないじゃん。
そう思いますよね。
実は、農林水産省のウェブサイトに、
通常の圧力鍋の調理条件で加圧調理したお米や野菜では、アクリルアミドがほとんどできないことがわかりました。アクリルアミドを減らすために、加圧調理を避ける必要はありません。
と書かれた情報を見つけました。
なので、安心して圧力鍋を使ってください。
自動調理・無水鍋(ヘルシオホットクック)
もう1つは、勝間和代さんオススメの、自動調理・無水鍋、ヘルシオホットクックです。
水なしでカレーやシチュー、ポタージュなど、数多くの料理が作れてしまうという優れもの。
勝間さんがブログで、「私はもっぱら、鳥だったらもも肉、豚だったらバラ肉を中心に使っています。…シチュー類は、安い塊肉がお勧めです。」とおっしゃっているように、安いお肉で美味しく調理できるのは嬉しいですよね。
朝に材料を切って予約設定しておけば、帰宅時間に合わせてアツアツのおかずができている、なんていう便利な機能もついています。
日頃ゆっくり料理してる時間がないというかたに、オススメ調理器具。
もちろん煮込み料理を作るための無水鍋なので、焼いたり揚げたりするのに比べて、アクリルアミドを減らすことができますよ。
ホーロー鍋(ルクルーゼ)
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時間をかけて料理したい方には、ホーロー鍋がオススメです。
煮込み料理やスープだけでなく、炒めもの、ご飯ものなどの保温性を活かした料理から、揚げ物や無水調理まで万能なお鍋です。
家庭内だけでなく、キャンプなどでも使えるので便利ですね。
まとめ
- 高温調理はアクリルアミドの摂取につながってしまうから、気になる人は低温料理に切り替えよう。
- 「炒める」、「揚げる」、「焼く」から「蒸す」、「煮る」、「ゆでる」にすることで、アクリルアミドを減らすことができる。
- 「蒸す」、「煮る」の調理に、圧力鍋や無水鍋を使うと便利。
発がん性のあるアクリルアミドの摂取を減らして、健康な身体作りを心がけましょう!
参照文献:
農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/acryl_amide/a_kiso/syokuhin.html
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/acryl_amide/a_syosai/teigen/pdf/aa_syosai.pdf
厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/kagaku/topics/tp021101-1.html
食品安全委員会
http://www.fsc.go.jp/sonota/acrylamide-food170620.pdf
http://www.fsc.go.jp/osirase/acrylamide1.data/acrylamide_QA.pdf