前回、オルソケラトロジーについてブログ記事にしました。
ちなみにオルソケラトロジーとは、
就寝時に近視矯正用レンズを装用することにより,起床時以降に良好な裸眼視力を提供する屈折矯正手段
です。
近視矯正用コンタクトレンズの1つに、東レが販売している製品があります。
東レはこの製品に関連した特許を出願しており、「レンズ関連の情報を無視するわけにはいかぬ!」と、目を通してみることにしました。
今回のブログでは、この特許について簡単にまとめたいと思います。
角膜矯正コンタクトレンズ(東レ)
アイキャッチ画像のような普通のコンタクトレンズと比べ、明らかに形状が異なっています。
上記中央の図の通り、この特別な形状のコンタクトレンズを使って、角膜の形状を矯正するんですね。
特許明細書
(11)【公開番号】特開2018-112668(P2018-112668A)
(43)【公開日】平成30年7月19日(2018.7.19)
(54)【発明の名称】角膜矯正コンタクトレンズ
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
どんな特許か
発明の名称通り、「角膜矯正コンタクトレンズ」に関する特許です。
とはいっても、コンタクトレンズの材料などではなく、「形状」に限定した発明内容になっています。
請求の範囲のまとめ
主な符号の説明付き関連図
従来の形状 vs 本発明の形状
従来の形状
従来の形状の問題点
矯正された部分の局部(図6の角膜表面9)が、局部的に膨らんでしまう
そのため ↓
角膜表面の膨張部9から入射する光は、網膜6に焦点を合わせられない
結果的に ↓
特に瞳孔径が拡がる夜間や暗所で、視力矯正不良を引き起こす
*視力矯正不良を引き起こす理由*
角膜矯正径の端部から急に空間(ティアゾーンT)が拡がり、移行される角膜細胞が角膜矯正コンタクトレンズ壁面に沿って十分に移動できないため
本発明の形状(従来との違い)と改善点
シフト領域Sを形成する
結果 ↓
矯正後の角膜表面を滑らかな曲面にできるようになる
ベース領域と角膜表面の間に生じ得るティアゾーンTを小さくすることができる
結果 ↓
上記で問題となった視力矯正不良を改善
ベース領域B(図8参照)の幅を定義し、角膜側のコンタクトレンズの角膜表面を滑らかな曲線になるように修正する(図9参照)
その結果 ↓
期待する矯正結果が得られる
結局は…
角膜矯正コンタクトレンズの形状を修正することで、視力矯正不良を改善し、その結果矯正の効果が従来に比べ高くなる、ということですね。
最後に
ちなみに、オルソケラトロジー関連特許は、東レだけでなく、HOYAやロート製薬、メニコンなどの大手企業も出願しています。
今回の特許はオルソケラトロジーに関する「レンズの形状の改善」に焦点が当たっていましたが、この他にも「レンズの材料」や「レンズを作成する方法」だったりと、いろいろな切り口の特許が存在します。
これまではレンズと言えば「半導体・露光装置」関連ばかり学習していましたが、レンズを全く違う角度から学ぶのも面白そうですね。
またチャンスがあれば、別の特許もブログに掲載できればな、と思っています。